人生の目的には階層があり、その究極目的は幸福である。そして、幸福になるためには人間としての力量すなわち徳を身につけることが必要だということが示唆されます。つまり、どのような人柄を形成すれば幸福になれるのかを考察するのが倫理学なのだとアリストテレスは論述するわけです、
活動の反復から性格は生まれる
20年を超える特性論データの調査と分析の末に私たちは多様な経験を通じて自身の捉え方が変わることを確認しました(成長の因果特許)。そこで性格を形成するために積極的に経験を積む大切さに気づいたのです。ではどのような性格を形成すればより良く生きることができるのだろうか。その問い自体が倫理学を指しているのです。そこでアリストテレスが説いた枢要徳を積むという思想を受け入れて。枢要徳診断(筆者開発)で身につけている人柄の傾向を確認し人生の方向付けの与え直してきた変遷を知ることで自らの物語の流れに気づきその先の人生をより良く生きるための方向付けの与え直しを考えるのである。
「徳は生まれつき備わっているものではない」。だからと言って、私たちは自らの性格を自由自在に築き上げていくことができるかというと、必ずしもそうではない。 なぜならば、私たちが「自分の性格を何とかしたい」などと思い始めたときには、すでに相当な習慣づけがされているからです。
もっと勇敢になりたいと思う人は、つい尻込みすることが身についてしまっているからこそそう思うわけですね。つまり、私たちはニュートラルな状態から出発できるわけではなく、気づいたときには「徳」と「悪徳」の組み合わせによる、ある種の人柄の傾向を身につけているわけです。
アリストテレスが言っているのは、その身につけてしまったものを引き受けたうえで、「いま、ここ」でどのように振る舞うかが大事だということです。それによって、少しずつではあるけれど決定的な仕方で、自らの人生に方向づけを与え直していく
LLC(ライフラインチャート)が単純に人生の振り返るモノであるのに対してself-narrative と枢要徳診断(筆者開発)は人生を意味の次元で捉えて人生の方向づけを与え直していくことが目的である。
特性論の課題を越える意味の次元とナラティブ・アプローチnarrative approach
個人のパーソナリティの特徴をその構成要素である特性の羅列としてとらえるのではなく,個々の行動や人生の意味といった解釈された意味の次元においてとらえることが必要である。特性論trait theoryの提唱者として知られるオルポートAllport,G.W.(1961)さえも,個性記述的方法の重要性を認識しており,個々のパーソナリティ特性を有機的に結びつけて具体的な人物像を浮かび上がらせるには,日記や手紙などの個人的文書を活用することも必要であるとしている。
意味の次元の探究を重視するジョッセルソンJosselson,R.(2006)は,人びとの人生経験は過度に単純化された測定尺度や人工的な実験条件を基に中心傾向や統計的に有意な集団差を追究する試みの中で見失われてしまったと指摘し,ナラティブ・アプローチnarrative approachこそが人びとの人生を生きられているものとして観察し分析することを可能にするとしている。
そこで筆者は、特性論を超える物語的自己を記述する方法を仲間と開発したのである。
2023年9月文責デザインと創発研究所主宰日本認知科学会正会員・日本生産性本部認定経営コンサルタント吉田聡。