みんな間違っている人的資本経営の誤謬とは
AI時代の人的資本論
AI時代の人的資本論
人的資本の開示が企業に求められていますが、この問題を考えるにあたって重要なことがあります
それは身体的自己と知識を生成しながら成長を遂げていく多層の物語的自己の明確な線引です
従業員の保有するスキル、知識資質ノウハウなどを能力的概念(内在性、可搬性安定性)で捉えることは間違っていると認知科学では明らかにされている知識もスキルも極めて文脈に依存して創発されるものだからだ。
能力的概念で身体的自己を表すと結局、性別や勤続年数、担当職務歴など、身体的属性情報に行き着くことになる。
要するにタレマネシステムって使えないよね〜というここ数十年の現場の議論の巻き戻しにしかならないのである。
重要なのは、身体的自己ではなく、物語的自己であることは明白だ、物語的自己とは常に人生の文脈の中にある。
自己定義だ、
認知科学で言えば人生のメタ認知である。
そこには記憶注意、遂行といった生きていくうえでの基本機能の発揮状況が網羅されている、
能力という虚構の概念はそこには無い。
筆者はかつて1万人規模の金融会社で資質やタスクの調査分析を行った経験があるがジェンダーや属性といった身体的自己が組織の中で幅を効かせている(評価や昇進において)ことは明白であった。
その後、女性の管理職登用などを増やしてジェンダーギャップを無くそうといったムーブメントがあったわけであるが、人的資本開示の議論を見ているとなんだか時代が逆行しているように感じてしまうのだ。
筆者これまでの豊富な経験を通じて筆者が到達した結論は、物語的自己の記述による創発のスレービングである。創発自体は還元不能意図不在なのでデザインすることは出来ない(創発的デザインと最適化デザインに分けるという考え方はある)がスレービング(焚きつける)ことは可能であると考えられている。
物語的自己の記述は、メタ認知の促進を通じて自己肯定感を高め、未来の選択肢を広げるそれは、成長し続ける人であり、価値を高める組織の実態なのである。
そこで筆者は、知人の専門家とともに物語的自己の記述方法を開発した(特許出願中)
これは成長の因果研究(こちらは特許取得済み)のネクストパラダイムなのである。
Tranceformerモデルによる生成系AIを誰でも自由に使えるようになり、そういった先端テクノロジーで多層的自己をいかに拡張していくかが協働における今後の大きなイシューであることは違いないだろう。
能力(スキル、知識ノウハウ)という虚構の概念を超え使えないタレマネシステム議論の落とし穴に再び嵌ることなく成長し続ける人と、社会的価値を高めていく組織を実現するのは正にAI時代の今の最重要経営課題であると言えるのではないでしょうか。
2023年9月文責デザインと創発研究所主宰日本認知科学会正会員・日本生産性本部認定経営コンサルタント吉田聡。